an odd fellow

仕事のメモ

リズと青い鳥

liz-bluebird.com

日曜日に見てきたところたいへんな出来栄えだったのでぜひ見ていただきたい。そう思ったので見どころを言語化したい。

「ずっとずっと、一緒だと思っていた」と公式ページにあるように「ずっと一緒には居られないよね」をこの2人が知る話です。中学の時から一緒に吹奏楽部に所属しておりとても仲が良くて、特に右の子は左の子にべっとりと依存している。だけど高校も3年生になり進路を考えるタイミングになり色々起こって「ずっと一緒には居られないね」となる。そういう話です。

原作は竹田綾乃。”響けユーフォニアム”で知られる小説家。響けユーフォニアムは高校の吹奏楽部の話をリアリティのある設定で書いた話で、一昨年アニメ化されてこれもとても良い出来だった。”リズ鳥”は響けユーフォニアムの正式な続編なんですけど、その冠を付けなかったのは過去作を見てない層も取り込みたいのでしょう。実際過去作を見ていなくとも話について行けるようになっている。

監督は山田尚子。言わずもがな、けいおんの監督。足の演出が秀逸。

脚本は吉田玲子。直近だとガルパンが有名か。女同士の気持ちのよい関係を書くのが得意だと思っている。大好き。

というわけで、2010年代を代表する有名作品を担当していた監督と脚本、それに鳴り物入りの原作もあるという夢のようなスタッフィングです。

2つのことを意識して冒頭の5分間を見て欲しい。

1つは音。みぞれとのぞみ、それ以外の女生徒とで明確に 足音 が違います。これは、おれの勘違いじゃなくて作中でも表現されている。みぞれが校門でのぞみを待つシーン。みぞれは座って俯いて待つ。のぞみじゃない女生徒が来てもみぞれは顔も上げない。足音でのぞみでないことが分かっているので。のぞみが来るとすぐにパッと顔を上げる。この演出は天才では?そして足音は伏線になっていてクライマックスのシーンで回収される。

2つ目が足。山田尚子は足の演出だ。待ち合わせた2人は校門から音楽室へ向かい、この間セリフはほとんどない。2人が校舎を歩くだけ。でも歩き方、足音、廊下の曲がり方、これで2人の関係性を説明してしまう。飄々とあるくのぞみ、後ろをそっと付いていく少し嬉しそうなのぞみ。のぞみが触れた手すりを後から自分もそっと触れるみぞれ。天才か〜。ラストシーンも2人で歩いている。今度は逆に校門から外に出ていく。このときの2人の歩き方を見て欲しい。関係性が変わったんだなっていうのが良く分かる。入力と出力が閉じていて美しい脚本です。

というわけで少女の非言語な振る舞いをじっと見つめて解釈するという繊細の作業が要求してくる映画で、見終えるとどっと疲れている。更にその完成度の高さで、おれは腰が抜けてしまってしばらく歩けなかった。たいへんな出来栄えでした。